『愛を歌うより俺に溺れろ!』

愛を歌うより俺に溺れろ! 1 (フラワーコミックス)

愛を歌うより俺に溺れろ! 1 (フラワーコミックス)

世間的には少コミの漫画はエロ漫画ですかそうですか。ストーリーは、とりあえず1巻の背表紙にある文章を引用。

女子校の王子(♀)が男子校の姫(♂)に恋をした!?
…水樹(みずき)は女の子バンド[青き薔薇](ブラウエローゼン)のリーダー。
通っている女子高で「王子」扱いされる、美少年ちっくな女の子。
そんな水樹の前に、男子校で「姫」扱いされる秋羅(あきら)という男の子が現れた!!
女の子よりかわいくて、どの男よりも攻め攻めな最強俺様男子秋羅に、
水樹はオンナにされてゆくー…!
ラブのカリスマ新條まゆが放つ男女逆転ラブコメディ!

上の表紙画像、左に大きく写ってるのが秋羅君(♂)、右にちょこっとだけ入ってるのが水樹(♀)です。


リアル知人数名に意見を聞いてみたけど、どうも評判が良くないです。こんなキモいセリフを連発する男はキモ過ぎってことらしいです。まぁ、確かに同意しますよ。リアルなら。
でもね。これは漫画ですよ?
ファンタジーなんだからキザなセリフ言ったって良いじゃないですか。というかフィクションだからこそ可能なキザ男ですよ。例えばランスが現実にはありえないのと同じで、秋羅は現実にはあり得ないいい男なわけですよ。だから評価基準は現実世界のそれではなく、ファンタジーとしてどれだけ素敵な男を描けているかという尺度になるわけですよ。

そういうわけで、三次元男でこれを言ったらキモイとかありえねーとかそういう現実的判断を度外視して秋羅きゅんを評価すると、これは確かに最強なわけですよ。
見た目ロリぃで可愛いしぐさを見せたりするわけだけど(姫秋羅)、また別の瞬間には、新條まゆお得意の悪くてえちぃ男(黒秋羅)としての表情を見せるわけで。


思うに、可愛い男にはヒロイン(&読者)はメロメロに「なる」んですけど、かっこいい男にはヒロイン(&読者)はメロメロに「される」ということができるでしょう。前者は中身から溶ける感じ、後者は外殻から溶ける感じです。
新條まゆの漫画のこれまでの男性キャラはヒロインにいけない言葉を囁いて強制的にメロメロにさせてくれる、外殻系の魅力でした。
ところがこの秋羅きゅん、そういった攻めの強さは維持しながらも、可愛いそぶりで内面をも籠絡してきます。中から外からトロトロですよ。
この二面性の魅力が端的に現れているのが143頁です。スキャナが無いのでセリフだけ。

秋羅「水樹ちゃんは俺が見つけた青い薔薇だから…」
水樹(秋羅!! --かっこいい!!)
秋羅「なんてねっ」
水樹(照れた!! --かわいい!! (ズキューン))

こうした二面性というのは、「姫」と「黒」という二つの魅力を味わえるのみならず、「二面性」というそれ自体で独自の価値を持つ魅力にもなります。ツンツンとデレデレが合わさると新しい属性になる、というのと同じ理屈です。こんなのにあてられたらだ…ダメだ これ以上は体がもたない!!って感じです。

ただしこの漫画の秋羅きゅんはやっぱり新條まゆの男キャラです。二面性を持ちながらも、それは主として黒の魅力のために活かされます。スイカに塩をかけると甘みが増して感じられるように、姫の側面のおかげで、たまに覗かせる黒秋羅の魅力がよりいっそう引き立ちます。
漫画自体の構成が、この黒秋羅の魅力をいかに描き出すかというコンセプトをもって作られています。第1話で、ギリギリまで単なる可愛い男の子として(そして一見ありがちな話として)描いておいて、最後の見開きで水樹ちゃんの悲しみに…つけ込みに来たんだよ。キャーつけ込んで!って感じですよ。
そんなわけで、女の子よりかわいくてキュートな秋羅が… ホントは強引で男っぽくて頼りになって… 誰よりも…かっこいいってことはぜひ皆さんに知ってもらいたいなと。


ところで。留依君が跡取りだというヤクザの名前が「龍牙会」って…名字が鷹沢だったりしたらどうしよう。*1

*1:黒天使のは「牙会」だけど。