AquaSKKを一週間使ってみた。

AquaSKKの紹介。

AquaSKKMac OS X 用のかな漢字変換プログラムです。多機能エディタ GNU Emacs で動作する SKK の長所を継承し、シンプルで快適な日本語入力環境の提供を目指します。
AquaSKK - 日本語を快適に

SKKは今は京大教授をしてる人が開発した日本語入力環境だそうで、基本的には、漢字になる部分とひらがなになる部分をユーザが自ら指定して、漢字変換させます。
どんな感じに入力するかというと、こんな感じ。

たとえば「今日は晴れです」という文は、SKKでは、
 Kyou haHaRedesu
と入力する(...)。 ※引用先の括弧内は誤りらしい
http://yougo.ascii24.com/gh/35/003568.html

AquaSKKのプロジェクトページには『驚き最小の法則』が引かれています。

驚き最小の法則
SKK に代表される日本語入力方式は、ユーザがコントロールできる領域を広くすることで、より自然な入力を可能にします。大袈裟に言えば、かな漢字変換プログラムに奪われた「漢字変換の自由」を取り戻しているのです。
制御不能な箇所を減らせば、突拍子もない「誤変換」に驚くことが減り、結果として入力スピードの向上へと繋がっていきます。
AquaSKK プロジェクト::迷っている人へ

使ってみた。

一週間使ってみて、それなりに指が慣れたところで、まずは実際の入力速度を測ってみました。

テストの内容

日本国憲法の前文を入力するのにかかった時間をストップウォッチで計測する。
エディタにはOSX標準のテキストエディットを使った。比較対象として、OSX標準のことえりを使った場合についても計測した(ATOKegbridge持ってないんですorz)。

測定結果

AquaSKK: 445秒
ことえり: 350秒
AquaSKK:ことえり = 127:100
キリのいい数字になってますけど、たまたまです。測定結果を丸めたりはしてません。

測定結果を受けての感想など

もちろん、未だ指が慣れきっていないこともあるのですが、それにしても思った以上に差が出ました。まさか3割近くも遅くなるとは。
後述するように、今回のテストはAquaSKKに多少有利な感じがしていたのですが…。


SKKを使ってみて思ったのは、これは思考パターンを組み換えなきゃいけないなということです。
私は、考えながら文章を打込むときには普段、まず音で考えたものをつらつらと入力し、その後改めて漢字に変換するという思考様式を採っています。これはまさに普通の日本語入力環境が採用するものですね。小学生の時からパソコンで文字入力しまくってた結果、頭の使い方までパソコン的になっている、のかもしれません(個人的には悪いことではないと思う)。そのような思考様式を採っているため、まずひらがなで入力しておけば良いという入力環境では余計なストレス無しに入力できます。
他方、SKKの場合は入力する時点でどのような漢字変換を行うかを意識していなければなりません。よくよく考えてみると、これは紙に文字を書く場合の思考様式と同じなんですね(だから私は、紙に書かなきゃいけない文章もとりあえずワープロで起こす)。これは私が思考を記録する場合にひっかかりになってしまう。
また、SKKでは文章は単語単位で細切れに考えることになります。私の場合は一文であれ一節であれ、ある程度のまとまりを持った単位で思考が発生するので、SKKの単語単位の思考を強制する形式はブレーキになってしまいました。
結局どのような入力システムでもどこかに漢字変換フェーズが入らなければならないわけですが、普通の日本語入力環境ではそれをある程度のまとまりを書いた時点で一纏めに行わせるのに対し、SKKではその処理を単語単位に分散させるものと言えるでしょう。普通の入力環境が纏まった時間を要求することに、あたかも大きな処理時間を食われているかのようなストレスを受ける人はいるかもしれませんが、その時間を単語単位に分散させてみてもその総和はあまり変わらない、かもしれません。
この点、PCのアプリケーションのUIなんかでは処理時間を分散させることでユーザのストレスを減らすことができたりしますが、文字入力の場合は思考そのもので時間が食われるので、ちょっと違うのかもしれません。
また、単語単位で考えるにしても、何が送り仮名であるかを入力時に意識しなければなりません。私の場合、文章の発想における最小単位は単語ではなくて文節なので、これもちょっと脳が苦しかったです。


しかし逆に、どこで漢字にするかなどがあらかじめ分かっていて考える必要が無いようなケースでは、SKKが普段よりも有利ではないか、と思ったりもしました。それが、上のテスト形式がSKKに有利ではないかと思った理由です。でもあの結果。うーむ。


あと気になった点として、Shiftキーを多用することです。Shiftは小指で押すことになるんですが、これが面倒。左の小指は普通の入力でも結構使うし、右の小指は普通のポジションに手をおくとShiftからは遠い。一般的なローマ字入力では親指が空いているので、親指でShiftを使えればもうちょっと指が楽かなぁ。


結論的には、AquaSKKは面白かったけど私には合わなかったということです。細かい機能(簡単な単語登録、zキーによる特殊文字の入力など)ではいろいろ便利だと思ったんですが。
何より、文法を解釈しないことで奇妙な文節区切りの発生を防ぐという驚き最小の法則の手法は、より長い文節で解析する方向で進化している入力システムにおいて、別な進化の可能性を感じさせてもらいました。SKKのように送り仮名まで入力者が考えるのは面倒ですが、例えば変換時に連文節変換を行わず常に単文節として解釈するシステムがあっても良いかもしれません。
というわけで。egbridge欲しい。