『世界の日本人ジョーク集』読みました。
- 作者: 早坂隆
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 新書
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うん。前著よりはいくらかマシになってます。薦めるだけの価値は無いと思いますが。
本書掲載の「日本人ジョーク」は必ずしも日本人を中心としたネタばかりではなく、ある事案について各国のステレオタイプに基づく反応を示しその差異を笑うという種類のものも数多く含まれています。『豪華客船から海に飛び込ませるには、アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄」、日本人には「みんあ飛び込んでますよ」』みたいなやつ。「日本人」ジョークというよりエスニックジョーク
と呼ぶ方が正確なもの*1。まぁその中には日本を含む先進国を並べ、最後にオチとして中国やロシアのような後進国*2を出して嗤うものもあるわけですが。
そういうわけで、本書は日本人観のみならず欧米各国のステレオタイプも見えてきます。っていうか本書で最も良く伝わったのは「イギリス人は料理が下手」というステレオタイプじゃなかろうかと。
でまぁ、そこで描かれる日本人のステレオタイプにはポジティブなものもあって、本書にまつわる書評では「それが日本人の失墜した自尊心をくすぐって売れている」とかそんなステレオタイプな議論が書かれていて、そんなんでお金もらえるんなら俺にも書かせろ閑話休題、本書自体は別に日本人マンセー本では無く、普通の本です。ポジティブなステレオタイプに対しても、そういった評価を将来も維持しうるかについてはネガティブなこと書いてあるし。
本書が前著『反米(ry』と比べてマシなものになった理由の1つには、このような、ポジティブネガティブ合わせ呑みの姿勢が挙げられます。『反米(ry』は「反」に限定した結果、すごく嫌らしい本になりました。本書はそういった明確な攻撃的意図が無いためにすっきり味です。これが『世界の反日ジョーク集』や『世界の親日ジョーク集』だったら前著同様の駄本になっていたでしょう。
もう一つの前著よりマシな理由は地の文が意味のあるものになっていることです。前著の薄っぺらい反米論議同様、本書の地の文も薄っぺらい文化論ではあるのですが、前著において地の文が「ジョークで米国を嗤う」というスマートな手口を台無しにしていたのに対し、本書では地の文に大した主張が無いこと、そして日本人である著者が外国で体験した対日ステレオタイプを紹介することで地の文が価値を見出せるものになっています。
もっとも『反米(ry』でも欠点であったジョークの出典国が明記されていないという問題は、本書でも改善されていません。「外国から」どう見られているか、という視点を与えようとしながら、「外国」を一様に捉えている点で日本の対外的関係の研究としての深みを欠き、余田話レベルにとどまっています。
というわけで。何も考えずに通勤電車で読む本としては最適でしょう。ステレオタイプは時代によって変化しているという指摘なんて、分かってない人がもしいるのであればとても有意義な指摘だと思います。
余談として。個人的に面白いと思ったもの。
ある時、大型客船が沈没し、それぞれ男2人と女1人という組み合わせで、各国の人々が無人島へと流れ着いた。それから、その島では一体何が起っただろうか?
- イタリア人……男2人が女をめぐって争い続けた。
- (略)
- 日本人……男2人は、女をどう扱ったら良いか、トウキョウの本社に携帯電話で聞いた。
- (略)
- ロシア人……女は愛していない方の男と結婚し、3人で果てしなく嘆き悲しんだ。
このロシア人観は、なんかロシア文学っぽくて良いなぁと思った。他のネタではロシア人=酒飲みでしか描かれていないので、このネタの視点は好き。