『父親たちの星条旗』観てきました。

富士山をフジヤマと読む米国人が硫黄島を「イオージマ」と発音するのは納得できます。『硫黄島からの手紙』だけを見るのはどうかと思い、仙台での上映終了間近だった『父親たちの星条旗』観てきました。
国庫の破綻で厭戦気分が高まっていた米国で、勝利の確信と戦時国債購入へと人々を駆り立てた写真をめぐる話です。硫黄島で米国軍が星条旗を立てた姿の写真、その写真に写った6人のうち生き残った3人が「硫黄島の英雄」として本国で国債購入キャンペーンに駆り出される。
この写真に写る旗も、最初の旗から上官の都合で交換した2枚目の旗を立てた作業であり、最初に旗を立てた人々は「英雄」になっていない、とか、旗を立てたのは勝利の瞬間ではなくその後も35日間戦闘が継続した、とか、そんなこんなで「英雄」本人も葛藤があったりとか、そんな感じです。
「本当の英雄は戦死した戦友たちです」という感じのことを「硫黄島の英雄」はキャンペーンで再三語りますが、どんな歴戦の勇者も一発で死ぬ(しかも本編では味方の誤射で)現代の戦争にあって本当の英雄が登場するのは困難で、しかもそうした英雄は戦時中に本国を凱旋行脚するものでもなく、国民の眼前に登場するのは「作られた英雄」になってしまうんだねぇ。


戦争をリアルに描けばそれだけで反戦映画になるという見本。
銃声や爆音が響く戦闘シーンはなかなかに迫力があります。日本人は硫黄島について玉砕のイメージばかり先行していますが、米軍も戦死者6821名、負傷者21865名を出しており大苦戦しています。なので米兵側の視点に立っても非常に気の重い描写になります。*1


ただし、取り立てて面白いところはありません。面白い戦争映画の存在が面白くない人には面白いかもしれませんね。

*1:尤も合計28,686名という人的損害は、日本軍守備隊の総員を大きく上回っている。などと勝利の如く書くのはどうかと思うが。