実写版『ラフ』観てきました。

あだち充のファンなので観ようと思っていたところ、上映が9/29までだったので観てきました、実写版『ラフ』。
っていうか夏真っ盛りに公開してくれれば良いものを。
カワイイ女の子やカッコイイ男の水着姿を見たい人にお勧め。それ以外にはあんま。


映画としての尺の制限にはストーリーを弄りながら対応しているんですが、これが原作の中で入れるべきイベントはきっちり入れてあって、悪くないです。また、ところどころに入るあだち充マンガの特徴であるとぼけた感じも実写ながら頑張って作ってあって、原作ファンを怒らせるようなものにはなっていないと思いました。
というように劇中のイベントは原作の要点を捉えながら構成してあるんですが、困ったことに心理描写には失敗してあります。『ラフ』は水泳より恋愛=心理が重要なので、ここに失敗してしまった以上、映画としてあまり評価できません。
具体的には、主人公である大和圭介を祖父の仇と憎むヒロイン二ノ宮が、大和に徐々に惹かれていくという部分が全く伝わってこない。それゆえラストで二ノ宮が両者を天秤にかけた時に、「お兄ちゃん」である仲西を選ばずに大和を選んだことが、根拠を欠いた不可解な選択にしか見えなくなってしまっています。結果的に、原作では素晴らしきツンデレであった二ノ宮が、単なる我侭女に堕ちてしまいました。
それと家の対立というロミオとジュリエットがほとんど省略されてしまっているのはちょっと残念。これは尺の制約の中で主題を絞る必要があったからかもしれませんけど。


それとラストのレースですけど、なんでレースの結果までやっちゃうかなぁ。結果の如何にかかわらずに大和を選んだという事実が重要で、そうなればこそ原作はレースが始まる瞬間に終劇となったのに、結果を描いてしまうと余韻が無い。
ラストシーンの関係では、二ノ宮がテープを仲西経由で渡したのも酷い話です。大和と二ノ宮が原作のように充分に仲良くなっていないため原作と同じ渡し方をしては不自然になってしまいますが、だからこそもっと両者の接近する過程を描くべきだったわけで、この部分を原作と違えざるを得なかったのはそこに至るまでの心の動きを描けなかったことの影響に思えます。