BT今月号の感想文-中国美術マジ凄いかも

美術手帖 2006年 10月号 [雑誌]

美術手帖 2006年 10月号 [雑誌]

いま中国では現代美術がものすごく盛んみたいです。

今年3月、ニューヨークのオークション、サザビーズで、中国人ペインター張暁剛が描く「血縁シリーズ」のうちの1点が98万ドルの落札額をつけたというニュースが届いた。日本円にして1億。その前後からだろう、「中国」「美術品バブル」という見出しが日本の新聞、雑誌などに頻繁に踊るようになっているのは。
(87頁)

ただしこのバブルは日本のバブルと正反対の面もある(田畑幸人@北京東京芸術工程、88頁)そうで、日本の美術バブルは日本人が外国画を高値で買い漁ったのに対し、今の中国は外国人が中国画を高値で買っているらしいです。件の張暁剛の作品もBTに掲載されていましたが、なるほどこれは素人目にも確かにオーラを感じます。
雰囲気は(今月号にも載ってる)奈良美智に通じるものがありますが、奈良の絵が表情を強く感じさせるのに対し、張の絵は非常に存在感のある無表情だと感じました。

さて、BTには最新の中国現代美術の作品がたくさん掲載されていました。
が、BTのプッシュに反して私はあまりピンと来ませんでした。
中国現代美術では現代批判、体制批判、畢竟毛沢東批判が非常に強いようです。
しかしこうした美術は社会環境を共有しない私には共感し得ないもののようです。
こうした「ありがちな批判」(中2病)は世に氾濫する現代美術が陥りやすい傾向であって、中国美術に限らず私はその手の現代美術にさほど興味ないんですが。
また、最近は体制側もこうした反体制的現代美術に理解を示し協賛するようになっているらしいです。
叩くだけの美術は受け入れられてしまえばその時点で死亡するので、あまり将来性のある話ではなさそう。

むしろ驚くべきは55〜64頁に掲載された、体制側の流れを汲む「全国美展」の作品群です。
社会主義的哲学からなににもましてアカデミックな技術のレベルが評価の基準として重視(57頁)されてきた本展の作品群は、確かな技術力によって生み出された存在感が観る者を引き込みます。
その受賞作品のうち95点が、現在は福岡アジア美術展で展示されてるそうですが、近所に来ることがあったらぜひ見に行きたいです。