「々」という字は

「じおくり」で変換できる。ちぃ覚えた。「偶々」は変換できるけど「次々回」は変換できなかった。
あと「全々」も変換できなかった。ごめん嘘。いや、ホントだけど。
「じおくり」は面倒い。「マ」で単語登録してしまおうか。「タ」でもいいかもしれない。

アンゴルモア大王の『不機嫌な果実』見てきました。

ごめんウソ。正しくは元米国副大統領アル・ゴアの『不都合な真実』ね。原題は『An Incovenient Truth』。不都合、でもいいけど、それだと「政府が隠している」みたいなニュアンスが強くなり過ぎないかな。「不愉快な真実」くらいの方が良いかも?
今やってる映画の中で、見ようかどうか5秒*1ほど悩んで「見たいと思いながら結局見なかったことになる映画」カテゴリに脳内分類したんだけど、なんか日曜日はTOHOシネマズの「エコサンデー」とやらで500円というから衝動で見てきました。500円なら勢いで見られる。んで、行ったら、直近の回は満席、次の回も先頭右端の席のみ、次々回は21時、といわれたので先頭右端。こんな首の痛くなる席は初めてだ。
男女比は半々くらい。年齢層はちょっと高め?私の隣の女性は見たところ20代前半くらい。メモ帳片手に映画を見る人は初めて見た。


この映画はアルゴアがこれまでに1000回以上は開催してきたという、地球温暖化に警鐘を鳴らすスライド講演を、映画の形式に編集した物です。基本的には米国人向けですが、外国での公演もこなすようです。
んで、まぁ内容自体はNHKスペシャル見たりNewton読んだりしてれば既に知ってる話が殆どで、私的に目新しい情報はあんま無く、スターウォーズが画期的であったような意味での画期的な要素は無いです。例えば「氷河が見えるホテル」だったはずが温暖化で氷河が遥か向こうに後退してしまったせいで単なる「ホテル崖っぷち」になってしまった写真とか、同じ物を見たことがある人も多いでしょう。
しかしそれはまぁ当然の話なのでそれによって本作の魅力が減衰することはないでしょう。むしろ本作は、そういった問題を映画というメディアを使ってそれなりに短い時間内にきっちり見せられる物を作ったという点で、文字通りの意味で有益な映画だと思います。それに、ゴア氏自身がこの問題の啓蒙活動の最前線をいっているだけあって、2006年の最新の情報で構成されています。


映画にはなんかアメリカ的講演なところがちょくちょく見られ、例えば突然ゴア氏自身のプライベートな話題に振って共感か同情かとにかくそういう物に訴える手法なんかは、かえって臭く見えてしまいますが、そこはそれ、「よく見ろジョニー、そいつはお前のワイフだぜ」みたいな感じで、瀬戸内海のような広い心でスルーします。
そういったアメリカ的要素を捨てれば、非常にこなれた良い講演です。上手いプレゼンです。そりゃ同じテーマで1000回以上も場数を踏んでるんだから、洗練されてない方がおかしいわけで、だからこの映画はおかしくないです。
ただ、まぁ学会の発表ではなく啓蒙の講演なので、理論的には批判されるべき点が無いでもないです。例えば氷に記録された地球の過去のCO2濃度と気温の変動のグラフが(まるで南米大陸とアフリカ大陸のように)一致することを示します。が、二つのグラフに関連性があったとしてもだからといってそこからCO2の濃度上昇が気温を上昇させているという説明をしてはならないわけで、なぜなら気温の上昇が原因でCO2濃度が増えたのかもしれないし、あるいは別の要因、例えば共産党のせいで気温とCO2の両方が増加せしめられているんだという説明もあり得る。ので、この一致したグラフを見せた後に「この通りCO2が増えると気温が上がる」と説明するならば、その前に適当な理由、例えば「CO2の分子の結合は使う腕の本数が少ないので例えばO2より結合が弱く、それゆえ振動=エネルギーを蓄積しやすいからCO2温室効果が高い。まして海底に固体で眠ってるメタンが溶けたらテラヤバス」みたいな、文系でも解る程度の説明を入れなきゃ、本当はいけないんだろうと思います。そんくらい常識だから省略しても大丈夫と思ったのかもしれませんけど。


あとは、まぁ、アメリカ固有の事情として「温暖化が現実に起っているかどうかはまだ科学者の一致した見解は無い」みたいな嘘が蔓延しているようで(だからそんなのにもゴアはいちいち反論している)、さすがID論の国アメリカ!と思ったら日本でも地球温暖化にCO2は関係ないと言っちゃう本があったりするのであんま馬鹿にできませんね。ごめんねヤンキー共。こうやって「事実を仮説であるに過ぎないことにしろ」という手法は米国でも使われていたようで、実際そういう指示のメモがすっぱ抜かれちゃったよね、っていうのが映画の中で紹介されてた。
あるいは環境問題より他のことに金をかけた方が良いという意見を頑張って「啓蒙」してるもいたりするんですが、どうも気温の上昇による影響は気温が上がることしか無いと考えている節がありますな。とかくこういう「癌が痛む?モルヒネ打っとけ」的な言説は激しく違和感を覚える。気温が仮に*2線形的に上昇したとしても、その影響は非線形ですぜ?大多数のの都市は標高の低いところにあって海水面が上昇すればあっという間に数千万人規模の難民が発生する、し、日本でも現状で既に沖ノ鳥島ピンチ。洪水や干ばつが多発して過去の治水事業は多くが無力化するんですが、そういうコストも含めて考えてるんですかねぇあの自称経済通は。身近な話なら、実家のあたりは夏でも取水制限が無くってそれは雪解け水のおかげなんだけども、最近雪が少ない(ここ10年で目に見えて減ってる)から、今は大丈夫でも次の10年はどうなることやら。
っていうかあれよ。自動車についてあの中国よりも緩い環境基準を採用している米国と違い、日本は現時点で世界トップの環境基準を採用し達成しているんだから、外国に対しては環境基準を高めるように圧力かけた方が国益にも適うよね。まぁ国益を理由に主張すると国益を理由に許否られるんだけど。
そういえば映画では国・地域別のCO2排出量が出てて、日本は地域としてはEUより多いけど一人当たりにするとEUより少なくなってた。よう解らんけど日本人は個人ではEU人より地球に優しいらしい。


それにしてもなかなか残念な時代に生まれたもんだとつくづく思ってしまう。いや、ある意味貴重なんだけど。なんせ10年以上前に小学校で習った「将来の危険」を目の当たりにしつつあるし。スコール降るし。なんか今年からは真夏日の上に新たに「猛暑日」を作るらしいし。ぶっちゃけ気温29度で「夏日」って言われても、京都で29度だったら「今日は寒いね一枚余分に着なきゃ」って話で、全然夏じゃないもんねぇ。これって「夏」の感覚が5度くらい上がったってことかね。昔みた教科書では仙台は冷帯だったけど、今は温帯ではなかろうか。とっしーによれば米沢でも灯籠祭が雪不足で開催が危ぶまれてるらしいし、そのうち国内の冷帯は北海道だけとかになりそう。
で、何が「残念な時代」かって、もしかしたらあと100年くらい後に生まれてれば、文明が滅んだ世界でロストテクノロジーの大都市(トーキョーとか)が海面下に見えるとか、そういうファンタジックな情景が見られたかもしれないのになぁ、ってこと。
いや待てよ?いっそ温暖化&&海水面上昇をもっと早める方向に加担して、生きてるうちに「ロストテクノロジーを知る最後の世代」みたいなポジションも美味しいかもしれんな。


あと余談だけど、蚊を避けるために蚊の生息できない高さ(寒さ)に造られた都市、っていうのは面白いと思った。なるほど、標高自体が蚊帳の役割をするんだな。この発想は無かった。温暖化で無駄になっちゃったみたいですけど。


で、総括。
情報が良くまとまっていていい映画だと思います。
終劇時には客席から拍手まで上がりました。が、こういう映画を見る人はすでにこの映画を見るまでもなくエコエコアザラクな人なわけで(拍手した人なんてその典型)、こういう映画はむしろエロイムエッサイムな人にこそ見せなければならないのだけどそういう人は見ないわけで。右翼が右翼雑誌しか、左翼が左翼雑誌しか読まないのと構造的に一緒。どう言いくるめて見せるかを考えないと、結局その影響も限定的になるよね、っていうのはこの手の話でいつも問題になる話。義務教育期間中なら強制的に教育できるんだけど、オトナは自分の嫌いな情報からは逃げれちゃうから。
うーん、「1000回以上も同じテーマでプレゼンやってるだけあって、非常にこなれた物になっている。内容に共感するかどうかはともかく、プレゼン手法の参考としてみるべきだ。」なんてのはどうだろうか。


つまりあれだ。アルゴアはMacユーザなんだから正しいことを言ってるに違いないんだ。

不都合な真実

不都合な真実

*1:私にしては長い方だ。

*2:実際にはメタンヤバス等で非線形なんだけど。